2019年11月28日
理研、分子ナノシステム設計し筋収縮の原理解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 生命機能科学研究センターの藤田恵介基礎科学特別研究員らの研究チームは27日、筋収縮の機能単位であるサルコメア(最小機能単位)構造の一部となる分子ナノシステムを設計し、収縮中のモーター分子(タンパク質)の動態を、世界最高の解像度で直視することに成功したと発表した。

この研究成果は、直接的にモーター分子の機能を制御する低分子化合物の効果を精密に分析することを可能にし、新たな心不全治療薬の開発に貢献すると期待できる。

筋収縮の分子機構に関する研究は70年以上と古いが、収縮の瞬間におけるモーター分子の動態を直接的にとらえることはできなかった。

今回、研究チームは、DNAオリガミ技術とヒト筋肉のモータータンパク質(ミリオン2)を用いて、サルコメアの一部(分子ナノシステム)を人工的に設計し、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)による画像化と、レーザー暗視野顕微鏡によって超高速観察した。サルコメア構造が厳密に再現された空間内で、ミオシン2分子がブラウニアンラチェット機構によって収縮に最適となる場所を探索し、2段階の可逆的な構造変化を経て力が発生している瞬間を画像化した。

今後は、医療応用とは別に、人工筋肉やナノアクチュエータの開発、メカノバイオロジー(生体の仕組みを解明して、がんや再生医療などの臨床的課題の解決につなげる)にも大きく貢献すると期待できる。


本研究は、英国のオンライン科学雑誌「Communications Biology」(11月27日付)に掲載される。