2020年03月04日
次世代型「全樹脂電池」ベンチャーに資金、7社80億円
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:三洋化成

三洋化成工業は4日、子会社で世界初の次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」を開発したAPB(本社:東京都千代田区、堀江英明社長)が、帝人など7社を引受先とする第三者割当増資により、総額約80億円の資金調達を実施すると発表した。APBは今後、全樹脂電池の量産工場設立に向けて準備を加速する。

<調達引受人>
JFE ケミカル◇JXTG イノベーションパートナーズ合同会社(JXTGホールディングスのCVC)◇大林組 ◇慶應イノベーション・イニシアティブ1号投資事業有限責任組合 ◇帝人 ◇長瀬産業 ◇横河電機の7社。

◆資金調達の背景と目的

APBは、三洋化成とAPBの堀江英明社長が共同で開発した、バイポーラ積層型のリチウムイオン電池「全樹脂電池」(All Polymer Battery)を製造、販売するスタートアップ企業で、2018年10月の設立。

「全樹脂電池」は、界面活性制御技術を有する三洋化成が新開発した樹脂を用いて活物質に樹脂被覆を行い、樹脂集電体に塗布することで電極を形成する。従来のリチウムイオン電池と比べて工程を短縮することで、製造コスト・リードタイムの削減と、高い異常時信頼性、エネルギー密度を実現する。

部品点数の少ないバイポーラ積層型で樹脂で構成しているため、電極の厚膜化が容易にできる、セルの大型化が可能で形状自由度が高いなどの特長を有する。

今回の資金調達は「全樹脂電池」の量産工場設立を目的とするものであり、APBは今後、全樹脂電池の量産技術の確立、製造販売の開始に向け本格準備に入る。

【堀江英明社長コメント】
従来から電池のデザインは、電流の抵抗を低減するための部材として金属であることが必須と考えられてきた。我々は今回、世界で初めて、集電体を含めた電池骨格を全て樹脂材料で再構築し、またバイポーラ構造を採用することで、出力は従来同様に確保しつつ、異常時においても電池内部での急激な発熱・温度上昇を抑制する電池デザインとそれを支える一連の革新的な技術群を創出した。今回の増資で、既存株主に加え新たなパートナーからのご支援を頂くことにより、さらに強力な体制で、工場建設・新生産プロセスを実現し、いち早く本技術の社会実装を図っていきたい。

【安藤孝夫・三洋化成工業社長】
自家発電、電力の自由化、再生可能エネルギーの活用、災害対応など電池や蓄電システムの重要性は今後はさらに高まる。曲げても釘を打ちつけても発火せず安全で形状自由度が高く、低コストという革新的な全樹脂電池は、持続可能な社会の創造に貢献できるものだ。当社はAPBの株主として事業化を支援し、パートナー各企業とともに「オールジャパン」の体制を作っていきたい。10月には日本触媒との統合を控えているが、両社で引き続きAPBをサポートする。10年後には数千億円規模の事業に成長させたい。