2020年03月05日
東大・東工大など「キラル構造の放射状スピン構造」発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

東京大学、東京工業大学、理化学研究所、科学技術振興機構の研究グループは4日、キラルな結晶構造(右手と左手のように鏡映したときには重なるが、平行移動では互いに重ならない構造)に由来して発現する固体内スピンの特性を、テルル単体を用いた実験で明らかにしたと発表した。

キラルな結晶構造を持ち、かつ強いスピン軌道相互作用を伴う物質では、電子の磁石としての性質であるスピンに由来した磁気的性質が、非磁性材料にもかかわらず発現し得ることは、20世紀半ばから知られていた。だが、その物性をつかさどるスピン偏極した電子構造の直接的な観察は、これまで成功していなかった。

今回研究では、最も単純なキラル結晶構造を有し、かつ強いスピン軌道相互作用を併せ持つテルル単体に着目し、スピン分解・角度分解光電子分光実験を行った。

その結果、キラルな結晶構造を持つ物質に対して初めて、スピン偏極した電子構造の観察に成功した。さらに、キラルな結晶の特徴として、スピン構造が放射状となること、また、それらのスピンの向きが「右手系結晶」と「左手系結晶」で反転することを実験的に示した。

今回の結果は、強いスピン軌道相互作用を有するキラルな結晶が、有望なスピントロニクス(電荷だけでなく磁石的性質のスピンを利用する分野)材料であることを示しており、今後、電子・スピン変換デバイスの研究開発への進展が期待される。

本研究成果は、米国物理学会学術誌「Physical Review Letters」に米国東部時間3月10日に掲載予定で、特に重要な論文としてEditors' Suggestionに選出された。