2020年03月09日
東大、AI用い細胞ビッグデータを超高速取得
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

東京大学大学院の三上秀治助教(理学系研究科)らは6日、生物学・医学の分野におけるAI技術開発の肝となる高品質・大規模な細胞画像の取得技術「疑似固定蛍光イメージング・フローサイトメトリー(VIFFI)の開発に成功したと発表した。実例として、ディープラーニングを用いて高精度な細胞解析(AI×免疫学)を実証した。

近年、生物学・医学の分野では生体試料からAIによって情報を引き出す研究が盛んだ。AIを用いることで、これまで人手や直感に頼っていた作業が自動化され、また処理しきれない膨大な情報を処理できるようになるため、これらの分野に革命的な進展が生まれることが期待される。

ただ、AIが能力を発揮するためには、高品質かつ大規模なデータによってAIを「学習」させることが必要となる。従来の技術ではこのような高品質・大規模データを取得することが難しく、本来のAIの能力を活かしきれていなかった。研究グループは、過去に大規模な細胞集団から顕微鏡画像を取得する技術を開発したものの、撮像を高速化するほど画像が不鮮明となる問題があり、取得されるデータはAIの能力を引き出すには不十分だった。

今回の研究で、多種多様な細胞集団(血液細胞、免疫細胞、がん細胞、幹細胞、微生物、腸内細菌など)から膨大な情報を引き出して活用することが可能となり、今後、AI× 医療、AI×創薬、AI×スマートセル産業などへの展開が期待される。

研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)、日本学術振興会の研究拠点形成事業、科学研究費助成事業、ホワイトロック財団、精密測定技術振興財団などの支援を得た。

本研究成果は、3月6日に「Nature Communications」のオンライン版で公開された。