2020年03月27日
理研「ものづくり現場で中性子線使い材料分析」可能に
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

 日本原子力研究開発機構・物質科学研究センターと理化学研究所の共同研究グループは、原子力機構の中性子回折法による集合組織測定技術と、理研の小型加速器中性子源システムRANS(ランズ)を組み合わせて、中性子回折法による実験室レベルでの集合組織測定技術の開発に世界で初めて成功したと発表した。軽量化を可能にする鋼材開発に新たな道筋がついたとしている。

 鉄鋼材料は一般的に高強度になるほど変形しにくくなるため、高強度と高い延性を両立した材料の開発が必要となる。鉄鋼材料は複数の小さな結晶の粒(結晶粒)が集まってできた多結晶の状態にあり、これらの結晶粒はそれぞれ異なる方向を持っている。

 この結晶粒の方向は、圧延や加熱によって、ある程度揃った(偏った)状態になる。この結晶の向きの偏りは集合組織と呼ばれ、その偏りの仕方によって材料の強度や延性などの材料特性が変化する。そのため、延性を持たせた高強度な鉄鋼材料の開発には、その集合組織の状態を正しく把握して制御することが重要になる。
 
 鉄鋼材料のバルクに対して集合組織を測定するには、鋼材に対して透過性の高い中性子を用いる中性子回折法が有効だ。しかし、その中性子源は研究用原子炉などの大型実験施設に限られ、企業の実験室や工場などでの利用が期待される小型中性子源では、ビーム強度が低くこれまで測定されてこなかった。

 今回、共同研究グループは、RANSによる集合組織の測定技術を開発し、J-PARCの物質・生命科学実験施設で測定される集合組織と同等の精度で、小型中性子源による集合組織の測定を実現した。今後、実験室や工場レベルでの集合組織の測定が実現し、材料の基礎研究、軽量かつ高強度を可能にする新材料開発および加工技術開発の加速につながると期待できる。


ニュースリリース
https://www.riken.jp/press/2020/20200326_2/index.html