2020年04月13日
昭電など、AIで「フレキシブル透明フィルム開発」迅速化
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:昭和電工

 昭和電工と産総研、NEDO、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は13日、フレキシブル透明フィルムの開発に人工知能(AI)を活用し、要求特性を満たすフィルムの開発の実験回数を25分の1以下に低減できることを実証したと発表した。

 NEDOの「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)」の一環。NEDOは、従来の経験や勘に依存する材料開発から脱却するため、実験回数や開発期間の短縮にAIを活用するプロジェクトを推進している。

 昭和電工などは今回、モバイル機器などの開発に欠かせないフレキシブル透明フィルムの設計にAIを活用し、要求特性を満たすポリマーの探索に取り組んできた。はじめに、熟練研究員が27種類のフィルムを作成し、その原料の分子構造、モル比などの化学的な情報を Extended Connectivity Circular Fingerprints (ECFP)という手法を応用して説明変数に落とし込み、目的変数にはトレードオフの関係にあり並立の難しい「換算透過率」、「破断応力」、「伸び」の3項目を、実測データをAIに学習させた。

 その後、説明変数を網羅的に割り当てたデータを用意して、偏差値概念を導入したAIにこれら3項目が等しい割合で最大となる配合を予測させ、その予測の通りに3種類のフィルムを作成し、AI 学習データを作製した熟練研究員が自己の知見に基づき作成した25 種類のフィルムの物性値とを比較した。

 この結果、AI が予測した配合で作成した3 種類のフィルムの物性値は、いずれも比較実験として熟練研究員が作成した25 種類のフィルムの物性値よりも優れていることが判明した。
 
 研究員による開発に比べて25分の1以下の実験回数でより高い物性値のフィルムを得られたことから、大幅な開発期間の短縮が可能なことが実証できただけでなく、研究員の経験知をもとに作成した製品を超える製品が開発できる可能性があることも実証した。

 今後はさらに技術を高度化させ、要求特性を満たしながらより良い物性値となる配合比をAI が提案できるよう開発を進める。


<用語の解説>

◆Extended Connectivity Circular Fingerprints (ECFP)とは :官能基などの部分構造の種類・数を数値化して分子の特徴を表現する方法。詳細は下記の論文参照。
D. Rogers, M. Hahn, J. Chem. Inf. Model. 50, 742 (2010).
T. Minami, et al., MRS Advances, 3(49), 2975 (2018)
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ciqs/2018/0/2018_1P10/_article/-char/ja

◆説明変数とは :ポリマー原料のモル比や官能基の種類など、予測の手がかりとなる変数のこと。


ニュースリリース参照
https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1586745984.pdf