2020年04月14日
理研、プリオン感染に「種の壁」の分子機序解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

 理化学研究所 脳神経科学研究センターの田中元雅タンパク質研究チームリーダーらは14日、生体内に存在する可溶性プリオンタンパク質の短い天然変性領域における特定の揺らいだ構造が、異種間でのプリオン感染効率の制御に関与していることを明らかにしたと発表した。

 この研究成果は、これまでに不明な点が多かった、神経変性疾患の患者脳で生じる異なるタンパク質間での共凝集の理解に役立つと期待できる。

 ウシからヒトへの「プリオン病」の感染がまれなように、プリオンタンパク質のごく少数のアミノ酸配列の違いによって、異種間でのプリオン感染性は大きく減少する。このような現象は「種の壁」として知られているが、その分子機序は分かっていなかった。

 今回、研究グループは、2つの遠縁種由来の酵母のSup35プリオンタンパク質(Sup35)を用いて、Sup35における短い天然変性領域を調べた。その結果、可溶性Sup35の短い天然変性領域に、少数のアミノ酸残基を置換することにより、局所的に動きと構造が変化し、異種間プリオン感染が生じることを見いだした。
 
 こうした短い天然変性領域内では、メチレン基の有無というアミノ酸側鎖間のわずかな構造の違いでさえ、短い天然変性領域の構造を大きく変化させ、異種由来のプリオンタンパク質凝集体との凝集反応(感染効率)を制御することも明らかにした。

 同研究は、科学誌「Nature Chemical Biology」掲載に先立ち、オンライン版(4月14日)に掲載される。

<用語の解説>

◆プリオン病とは :脳内にプリオンタンパク質の凝集体が沈着し、神経細胞が変性する、現在まで有効な治療法が見つかっていない神経変性疾患。プリオンタンパク質の凝集体を感染源として、感染性を持つ。


ニュースリリース
https://www.riken.jp/press/2020/20200414_1/index.html