2020年05月28日

東大、磁化がゼロでも現れる磁気光学現象を解明

【カテゴリー】：ファインケミカル 【関連企業・団体】：東京大学

東北大学大学院の有馬孝尚教授（新領域創成科学研究科）らのグループは28日、チタンとマンガンの複合酸化物の光の透過を調べて、ある方向から光を入射した場合と、逆方向から光を入射した場合で、透過率に差が生じることが分かったと、磁気キラル二色性の存在を発表した。 通常の物質では、内部を透過する光の進む向きを逆にしても透過率に変はない。だが、キラリティと磁化を併せ持つ物質では、光が進む向きを逆にすると透過率が変化する（磁気キラル二色性現象）。 この物質には表側と裏側の区別が存在することになる。さらに今回の研究で、電場と磁場をうまく作用させることで表と裏を入れ替えることにも成功した。 今回の発見は、磁化が全くない物質でも、磁気キラル二色性という一種の磁気光学現象が出現しうることを明確に示すものとなった。現在のところ、磁気キラル二色性の存在が確認された物質はそれほど多くない。 今回の研究によって、磁気キラル二色性を探索する物質群の範囲が広がるほか、将来は人工的な磁性超格子の設計指針にも役立つと期待できる。 同研究成果は、米国物理学会学術誌「Physical Review Letters」（5月27日付）にオンライン版に公開された。編集者の推薦論文にも選ばれた。 ＜用語の解説＞ ◆キラリティ／キラルとは　：右手を鏡に映すと、左手のように見える。このように、鏡に映した前後の姿が、回転するだけでは重ならない性質をキラリティと呼ぶ。また、その性質を示す形容詞がキラルになる。