2020年06月04日
東大、MI駆使して半導体材料の熱伝導率を最小化
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東京大学

東京大学の塩見淳一郎 教授(機械工学専攻)らの研究グループは3日、機械学習と分子シミュレーションの組み合わせたマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用し、最適なナノ多層構造を設計し、作製、評価することで半導体材料の熱伝導率の最小化に成功したと発表した。JST 戦略的創造研究推進事業の一環。

同研究グループは2017年に計算科学に基づくMIによって、熱伝導率を最小あるいは最大にする最適構造を設計する手法を開発した。しかし実験による実証はできておらず、ナノスケールにおける構造の作製と物性の計測に基づく最適構造の実現が望まれてた。

そこで同グループは、2種類の材料を数ナノメートル(nm)ずつ交互に積み重ねる超格子構造を対象として、原子レベルで構造の制御が可能な成膜法と、ナノスケールの膜厚の熱伝導率が評価できる計測法を駆使し、熱伝導率を最小化する最適な非周期超格子構造を実現した。さらに最適構造では熱伝導を担う格子振動(フォノン)が波動的に干渉する効果を最大化し、熱伝導が強く抑制されることを明らかにした。

今後、熱電変換材料など、電気伝導率や機械的特性を維持しながら熱伝導率を低減できる熱機能材料の開発に役立つと期待される。

本研究成果は近く、米国科学誌「Physical Review X」のオンライン版で公開される。