2020年06月12日 |
筑波大、冬眠様状態を誘導する新規神経回路を発見 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:理化学研究所 |
筑波大学医学医療系の櫻井武教授らの研究グループは12日、理化学研究所との共同研究により、マウスを冬眠に似た状態に誘導できる新しい神経回路を同定したと発表した。 冬眠中の動物は正常時と比べて数%まで酸素消費量が低下し、外気温よりも数度高い程度の低体温を呈するが、何ら組織障害を伴うことなく自発的に元の状態に戻る。このような“制御された低代謝”は、外傷や疾患によって組織が受けるダメージを回避することができるため、臨床への応用が期待される。 だが、冬眠のメカニズムは全く分かっていなかった。冬眠研究を困難にしている理由の一つは、実験動物であるマウスやラットが冬眠をしないことだった。 今回研究で、マウスの脳の一部に存在する神経細胞群を興奮させると、マウスの体温・代謝が数日間にわたって著しく低下することを発見した。この神経細胞群をQ神経(Quiescence-inducing neurons : 休眠誘導神経)、また、このQ神経を刺激することにより生じる低代謝をQIH(Q neuron-induced hypometabolism)と名付けた。 QIH中のマウスは動き・摂食がほぼなくなり、体温セットポイントが低下した。QIHの前後で異常が見られず、きわめて冬眠に似た状態であることが分かった。さらに、休眠しない齧歯類(げっしるい)の一種であるラットのQ神経を興奮させたところ、マウスと同様に長期的かつ可逆的な低代謝が確認された。 研究によって、哺乳類に広く保存されているQ神経を選択的に刺激することで、冬眠を通常はしない動物に冬眠様状態を誘導できることが明らかとなり、人間でも冬眠を誘導できる可能性が示唆された。QIHの発見によって人工冬眠の研究開発が大きく前進したといえる。 詳細は筑波大学ホームページ http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p202006111800.html |