2002年03月19日
新日鐵化学、画期的な高耐熱性有機EL材料を開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:新日鐵化学

 新日鐵化学は19日、有機ELディスプレイに使用する正孔輸送材料について、既存の材料と同等の電気的性能を維持しつつ、現状(80~90度)のものよりも、約40度も耐熱性の高い材料の開発に成功したと発表した。これによって、高耐熱性の用途にも使用可能となり、用途がさらに広範囲にわたることが見込まれるとしている。
 また、同材料は、ユーザーの有機EL素子の処方に対応する構造のアレンジができることから、有機ELディスプレイを構成する、他のさまざまな材料とのマッチングも可能になるという。

◆開発技術の特徴点
(1)同社が、長年にわたり蓄積した多環芳香族化合物関連の技術に、独自に生み出した有機EL材料の設計コンセプトを加え、既存の材料と同等の電気的性能を維持しつつ、耐熱性の指標であるTg(ガラス転移温度)の大幅な向上が可能になった。
(2)従来までは耐熱性が高くなると、材料の成膜性が悪化する欠点があったが、今回開発した材料は、耐熱温度に関係なく、成膜性に優れている。
(3)この技術は、コダック社の特許に規定されている構造に当てはまらず、すでに同社で特許を出願している。

◆背景と今後の方針
 新日鐵化学は、昨年1月に「有機EL事業推進室」を発足させるとともに、他社に先駆けて、総合研究所内(北九州市)に有機EL材料の工業規模での量産体制を確立した。以来、高品質な材料の量産作り込み技術において、広くユーザーから評価を得、現在年間売上高で数億円規模の事業へと成長している。
 また、有機ELディスプレイ市場は、今年から来年にかけて、多くのディスプレイメーカーが市場に製品投入することを公表するなど、本格的な拡大期を迎えつつある。
 こうした中で、さらなるディスプレイの性能向上が求められ、材料面についても、様々な特性向上への期待が高まっている。なかでも、特に、正孔輸送材料の耐熱性向上が求められている。
 今後、開発した新材料の実用化に向けて、広くサンプルワークを進め、既存材料の拡販を図る。当面、年間30億円規模の売上高を目指す。