2020年06月16日 |
理研と慶応大、「生命の脂質多様性」を解明 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:慶応大学 |
理化学研究所(理研)生命医科学研究センターの有田誠チームリーダー(慶応大学薬学部教授)らの研究グループは16日、生命活動に必須の分子である脂質の構造多様性を明らかにする革新的なノンターゲットリピドミクス解析技術を開発したと発表した。 生体を構成する脂質の「質」(リポクオリティ)の違いを的確に捉えることを可能にするものであり、今後、生命科学研究のさまざまな分野での複雑な生命現象の理解に貢献すると期待される。 このところ、質量分析法を用いて脂質構造の多様性を捉えようとする研究が盛んだが、質量分析ビックデータは複雑かつ膨大であり、MS/MSスペクトルから脂質構造を解明することが困難なため、その全貌はほとんど明らかにされていなかった。 今回、共同研究グループは、ヒトおよびマウスの臓器・組織・細胞、腸内細菌叢などの脂質成分を網羅的に捉えるため、最先端の質量分析手法によるノンターゲット分析を行った。 得られた質量分析ビッグデータを解析するための情報処理技術(質量分析インフォマティクス)を開発した結果、既存の研究に比べ約10倍に上る約8,000種の脂質分子構造の存在が明らかになり、脂質構造の多様性を捉えることが可能になった。 同研究成果は、科学雑誌「Nature Biotechnology」オンライン版(日本時間6月16日)に掲載される。 <用語の解説> ◆リポクオリティ :Lipid(脂質)とQuality(質)を組み合わせた言葉。従来「量」として捉えられることが多かった脂質の「質」の違いを見分けることの重要性を表現するため、新学術領域研究「脂質クオリティが解き明かす生命現象」のキーワードとして生み出された。 ◆MS/MSスペクトル :タンデム型質量分析装置では、代謝物由来のイオンそのものを検出するだけでなく、そのイオンを開裂させて生成されるイオン群を検出できる。この断片化イオンスペクトルをMS/MSスペクトルと呼び、化合物同定では必須の指標として用いられる。 |