2020年06月23日
理研、高性能な高分子熱電変換材料を開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 創発物性科学研究センターの瀧宮和男チームリーダーらは22日、独自の高分子半導体材料を用いて高性能な熱電変換材料を開発したと発表した。今後、IoTや小型IT機器類の自立型電源に向け、身の周りのわずかなエネルギーを電力に変換する環境発電技術に貢献すると期待できる。

今回、研究チームは、独自に開発したナフトジチオフェン(NDTI)と呼ばれる半導体骨格に2種類の分子を組み合わせ、新しいn型半導体の高分子材料「pNB-Tz」を合成した。溶剤に溶けやすくするために、pNB-Tzの高分子主鎖構造に枝分れ構造を持つ側鎖を結合させたが、その側鎖の構造を調整したところ、薄膜中での分子配向を制御できることを見いだした。さらに、pNB-Tzに電子ドープを行った結果、高い電気伝導率とゼーベック係数を示し、熱電変換特性の指標であるパワーファクターは53μW/m K2に達した。

これらの特性は、これまでに報告されているn型高分子半導体を基盤とする熱電材料で最も優れている。また、薄膜中での分子配向の制御が高性能な熱電変換材料の開発に有効であることが分かった。

研究チームは分子間相互作用に由来する集合体構造の設計と予測に関する研究も進めており、これらの知見を融合することで、今後、さらに優れた特性を示すn型高分子熱電材料の開発に結び付けたいとしてる。


本研究は、科学雑誌「Advanced Materials」の掲載に先立ち、オンライン版(6月22日)に掲載された。


<用語の解説>

◆高分子半導体、有機半導体 :
通常使われる半導体材料はシリコン(Si)などの無機化合物で、優れた半導体特性を示す一方で、重くて硬く、デバイスの製造には高価な真空プロセスが必要である。Siの同族元素である炭素(C)からなるπ電子系分子を基本とするものが「有機半導体」、その中でπ電子系分子が繰り返し構造として無数につながり、分子量が大きいものを「高分子半導体」という。有機半導体は、発光(有機EL)、スイッチング(有機トランジスタ)、光電変換(有機太陽電池)などさまざまな電子デバイスに応用されている。


ニュースリリース参照
https://www.riken.jp/press/2020/20200622_1/index.html