2020年07月08日
京大・理研など「脳内地図を細胞レベルで観察」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

理化学研究所、京都大学などの国際共同研究グループは8日、「海馬」と呼ばれる脳領域の活動を細胞レベルでリアルタイムに観察する脳活動画像化実験を行い、空間学習に伴う脳内地図の形成メカニズムと自閉スペクトラム症の関連遺伝子Shank2の機能を解明したと発表した。

同研究成果は、ナビゲーションや記憶に関わる脳機能と、自閉スペクトラム症をはじめとする幅広い発達障害の病態解明に貢献すると期待される。

今回、国際共同研究グループは、バーチャルリアリティ環境で空間学習を行うマウスの海馬の活動を、二光子レーザー顕微鏡と呼ばれる生体深部を観察できる高解像度の顕微鏡で画像化した。その結果、海馬では学習が進むに従って「場所細胞」の数が増えること、またこれらの場所細胞が形成する脳内地図において、特徴のある場所(報酬とランドマーク)で応答する細胞は他の場所で応答する細胞よりも安定化していることを発見した。

さらに、自閉スペクトラム症モデルのShank2遺伝子欠損マウスでは、脳内地図におけるランドマーク地点の細胞の数が増加しないことを見いだした。

同成果は、科学雑誌「Cell Reports」オンライン版(日本時間7月8日)に掲載される。


<用語の解説>

◆海馬 :大脳皮質よりも深い部分にあり、場所や出来事の記憶とナビゲーションに重要な働きをする脳部位。

◆二光子レーザー顕微鏡 :生体に浸透しやすい近赤外パルスレーザーを用いて蛍光物質を観察できる顕微鏡。生きた動物の脳の深部を、深さ1mm程度まで高解像度で画像化できる。