2020年07月17日
理研、発育ステージに必要なエネルギー供給原理を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 生命機能科学研究センターの西村隆史上級研究員は17日、キイロショウジョウバエの発育ステージの移行に必要なエネルギーが計画的に供給される原理を明らかにしたと発表した。

同研究成果は、生命現象の理解をエネルギー代謝の観点から深めるもので、さまざまな生物における複雑なステージ移行の理解に貢献すると期待できる。

幼虫が成虫に移り変わる蛹(さなぎ)期では、外部からの栄養摂取が行われないため、幼虫期に摂取して貯蓄している栄養分を計画的に用いて、変態を行う必要がある。しかし、変態という発育ステージの進行に必要なエネルギー代謝がどのような仕組みで制御されているのか、その分子機序は未解明だった。

今回、西村氏らは、モデル生物としてキイロショウジョウバエを用いて、ステロイドホルモンが一過的に貯蔵糖の消費を促し、変態に必要なエネルギーや生体高分子の材料の供給を指令していることを明らかにした。

さらに、これに必要なステロイドホルモン自身も、貯蔵糖の消費に依存して生合成されていることから、ステロイドホルモンと糖代謝は相互に依存していることが分かった。これらの結果から、ステロイドホルモンとエネルギー代謝が協調的に機能することで、発育ステージの移行が実現していることを解明した。

同研究成果は、オンライン科学雑誌「Current Biology」(日本時間7月17日)に掲載される。


<用語の解説>

◆ステロイドホルモン :
コレステロールから生合成され、化学構造的にステロイド核を有するホルモンの総称。一般に、細胞膜を通過して、細胞内で核内受容体に結合し、遺伝子の発現を制御する。