2020年08月19日
九大など、同一細胞から複数のエピゲノム情報検出 成功
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学 生体防御医学研究所の大川恭行教授、東京工業大学 細胞制御工学研究センターの木村宏教授らの研究グループは18日、少数の細胞からエピゲノム情報を取得できる「クロマチン挿入標識」に関する実験手法を開発したと発表した。さらに、これまでは1つのサンプルでは単一のエピゲノム情報しか取得できなかったが、今回、同一サンプルから複数のエピゲノム情報を同時に検出する技術の開発にも成功した。

 人体は、多様な30兆個の細胞で構成され、数万種類の同一の遺伝子群(ゲノム)から、選択的に遺伝子を使い分けることで固有の機能を得ている。この遺伝子の使い分けには、ゲノムDNAに結合するヒストンの翻訳後修飾や転写因子の結合によって調節されている。
 
 このようなエピゲノム情報を解読することにより、種々の細胞内で使われる遺伝子と使われない遺伝子がどのように区別されるのかを調べることができる。これらのエピゲノム情報は、発生や分化、がん化などの過程で変化するため、その全貌を明らかにすることで、人体の成り立ちや病態を理解することが可能となる。
 
 だが、少数細胞によるエピゲノム解析には高度な技術が必要となる。研究グループは、昨年、単一細胞レベルでエピゲノム情報を解読する世界初の高感度技術であるChIL法を発表した。今回、様々なエピゲノム情報を同時に取得可能な発展型技術mtChILの開発に成功した。従来の技術では1度の解析で単一のヒストン修飾あるいは転写因子の結合情報のみしか解析できないため、エピゲノム情報の本質である「組み合わせ」の解明には至らなかった。
 
 個別にしか解析できなかった因子の組み合わせの網羅的な解析が可能になることから、今後は人為的な遺伝子操作技術の開発が期待され、遺伝子発現の破綻であるがんや特異的な遺伝子発現誘導が必要となる再生医療など多方面への応用が期待される。

 同研究成果は、8月18日(日本時間)に英国科学雑誌「Nature Protocols」に公開された。


 ニュースリリース参照
 https://www.kyushu-u.ac.jp/f/40322/20_08_18_01.pdf