2020年08月27日
理研など、腸内細菌と中枢神経系炎症の仕組み発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 生命医科学研究センターの大野博司チームリーダー(神奈川県立産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)らの共同研究グループは27日、腸内細菌が自己免疫性の中枢神経系炎症である多発性硬化症の発症や進行を促進する仕組みを発見したと発表した。

同研究成果は、小腸細菌叢を制御することが多発性硬化症の発症や進行の緩和に寄与する可能性を示しており、多発性硬化症の新たな予防・治療法の開発につながると期待できる。

これまで、多発性硬化症患者の腸内細菌叢解析や多発性硬化症動物モデルを用いた研究から、中枢神経系の炎症に腸内細菌が大きく関与していると考えられていたが、作用機序は分かっていなかった。

今回、共同研究グループは、多発性硬化症のモデルマウスを用い、自己応答性T細胞が小腸常在菌によって活性化され、それにより中枢神経系の自己免疫性炎症が増悪することを見いだした。

多発性硬化症は、神経軸索を覆うミエリン(髄鞘)に特異的なT細胞によって引き起こされると考えられている。

今回の研究で、腸内細菌の一つであるLactobacillus reuteri(乳酸桿菌)がミエリン特異的T細胞と交差反応することでT細胞の増殖を促進し、Erysipelotrichaceae科の菌がこのT細胞の病原性を高めることが明らかになった。
これら作用の異なる二つの菌が、相乗的に中枢神経系の炎症を増悪すると考えられる。

同研究は、科学雑誌「Nature」のオンライン版(日本時間8月27日)に掲載される。