2020年09月02日
東工大など「生体内で薬効と物性を制御」触媒開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所と東京工業大学、日本医療研究開発機構らの共同研究チームは2日、がん細胞などの標的組織で選択的に薬剤を放出できる遷移金属触媒反応を開発したと発表した。

本研究成果は、薬剤の薬効や物性(細胞膜透過性)を生体内反応で制御する「プロドラッグ」の新たな手法として利用できると期待できる。

「保護基」によって不活性状態にある薬剤を治療標的の組織上で脱保護(保護基を除去)し、活性化する生体直交型反応は、薬剤の副作用の軽減につながるプロドラッグの新手法として注目を集めている。

今回、研究チームは、薬剤のアミノ基に導入できる保護基として「2-アルキニルベンズアミド基(Ayba基)」を開発した。Ayba基は、遷移金属元素の金(Au)触媒との化学反応によって脱保護され、アミノ基を再生することができる。

特に、生体内環境でも進行することから、プロドラッグを活性化する生体反応として使用できる。
同研究では、Ayba基の構造や金属触媒の種類を調節することで、薬剤の活性を金属触媒反応によって自在に制御し、がん細胞を殺傷することに成功した。

同研究は、科学雑誌「Chemical Science」のオンライン版(日本時間9月2日)に掲載される。


<用語の解説>
◆保護基とは :有機化合物の反応性の高い官能基に導入することで、不活性化できる官能基。化学反応を行う際に、特定の官能基における望まない反応を防ぐために導入され、特定の反応条件で除去することが可能となる。