2020年10月02日 |
名大、電子の空間分布を1000億分の2mの精度で観測 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:名古屋大学 |
名古屋大学大学院 工学研究科の澤 博 教授らの研究グループは1日、大型放射光施設SPring-8を使ったX線回折実験によって、約1000億分の2メートル(0.2オングストローム)の分解能で電子の空間分布を直接観測することに成功したと発表した。理化学研究所、東京大学と共同研究した。 固体物質の機能・性質は、構成原子の電子のうち、一番外側を回る電子(価電子)の「軌道」状態に支配される。物質の性質を決定する最小単位は電子軌道だが、鉄やニッケルなどの遷移元素の3d電子軌道は、蝶々型や瓢箪型といった特徴的な形をしているとされるが、このような電子の実空間分布状態を直接観測することは困難だった。 今回、研究グループはSPring-8を使って、イットリウムとチタンと酸素からできている物質の30マイクロメートル角の小さな結晶を用いたX線回折実験を行い、同グループが提案するコア差フーリエ合成(CDFS)法という新しい解析方法によって、チタンイオンの19個の電子のうち“たった1個の価電子”が蝶々型に分布している状態を観測することに成功した。 この方法は原理的に全ての元素に適用できるため、今後様々な物質の電子軌道の研究への活用が期待される。 この研究成果は9月28日付の米国科学誌「PhyicalReviewReerch」電子版に掲載された。 名古屋大学ホームページ http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20201001_engg1.pdf |