2020年10月07日
北大、世界最高クラス性能のルテニウム触媒 開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学大学院 薬学研究院の松永茂樹教授をはじめ大阪大学、武蔵野大学などの研究グループは6日、高い反応性と安定性を両立したキラル2核ルテニウム触媒の開発に成功したと発表した。

多くの医薬品には右手体と左手体(鏡像異性体)が存在し、それぞれ作用が異なるため、それらを作り分ける技術が開発や生産に重要となる。効率的な手法にキラルな触媒を用いる触媒的不斉合成があるが、高価な触媒を比較的多量に必要とするため、応用は限定的となる。

研究グループは、新しいキラル2核ルテニウム触媒を開発し、これが触媒的不斉炭素-炭素結合形成反応に極めて高い反応性と優れた選択性を示すことを発見した。

このルテニウム触媒は、世界最高クラスの触媒回転数を誇り、既存の高価なロジウム触媒よりも数十倍高い触媒性能(触媒回転数と反応速度)を示した。

わずか0.5ppmの低濃度で高い性能を示し、一つの触媒分子から最高で約188万個もの生成物を作り出すことができた。さらに、ロジウム触媒では良い結果が得られない、他の触媒的不斉炭素-炭素結合形成反応や、炭素-窒素結合形成反応でも高い選択性を示し、汎用性が高いこともわかった。

研究グループは今回開発したキラル2核ルテニウム触媒を詳細に解析した結果、ルテニウムとロジウムの金属の価数と酸化耐性の違いでロジウム触媒よりも高い触媒性能を示すことを解明した。

また、このルテニウム触媒は、幅広い化学反応へ応用可能で、今後、医薬品をはじめとする複雑な有機化合物の生産効率化への貢献が期待される。

同研究成果は10月6日(英国夏時間10月5日)公開の「Nature Catalysis」誌にオンライン掲載の予定。


北海道大学ホームページ :
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/201006_pr.pdf