2020年10月12日
理研、3MHzの超高繰り返しレーザー光源 開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 光量子工学研究センターの鍋川康夫専任研究員らと東京大学の共同研究グループはこのほど、二つの異なる波長域の極端紫外 高次高調波を3メガヘルツ(MHz、1MHzは100万ヘルツ)の超高繰り返しで、同時に発生できるレーザー光源を開発したと発表した。

同研究成果は、時間分解光電子分光など、物質の超高速運動の様子を観測するための重要なツールになると期待できる。

極端紫外波長域の高次高調波は、コヒーレンス、短波長性、短パルス性などに優れているが、繰り返し周波数が低い(最大でも数十kHz)という課題があった。

今回、共同研究グループは、長さ約100mの周回型レーザー共振器を真空チェンバー内に組み上げた。レーザー媒質として熱交換効率の良いYb:YAG薄ディスクを用いることで、1kWを超えるパワーで励起が可能になった。

その結果、モード同期レーザー発振において、レーザーパルス光の繰り返し周波数は約3MHzに、パルスエネルギーは従来の約100万倍に及ぶ0.7mJに達した。共振器内2カ所の集光点に、それぞれネオンガスおよびアルゴンガスを吹き付けたところ、ネオンガスからは波長域24ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)~60nm、アルゴンガスからは波長域50nm~115nmの極端紫外高次高調波を同時発生させることに成功した。

同研究は、オンライン科学雑誌「Light: Science & Applications」(9月24日号)に掲載された。


(用語の解説)
◆極端紫外、真空紫外からX線領域
 光の波長が200nmよりも短くなると、酸素の吸収によって空気中を伝搬できなくなることから、波長が200nmよりも短い波長の光を「真空紫外光」と呼ぶ。真空紫外光の中でも、波長30nm~100nm程度の範囲のものを「極端紫外光」、波長10nm程度より短い範囲のものを「軟X線」と呼んで区別する場合がある。「X線」は波長が約1nm以下の光を指す。