2020年10月21日 |
理研、スピン量子ビットで量子熱機関を模擬的に再現 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:理化学研究所 |
理化学研究所 開拓研究本部の大野圭司専任研究員らの国際共同研究グループは20日、スピン量子ビットを用いて「量子熱機関」を模擬的に再現することに成功したと発表した。 本研究成果は、「量子重ね合わせ」により「エンジン」と「冷凍機」の機能を高速で切り替えるなど、従来の古典熱機関では実現し得ない技術の開発につながると期待できる。 産業革命以降、熱から動力を生み出すエンジンやその逆の過程である冷凍機などの熱機関は、生活の基盤となっている。近年、この熱機関に量子技術を導入する量子熱機関が注目されているが、量子技術の最小構成単位である量子ビットは、それ一つだけで最小の量子熱機関となる。 今回、研究グループは、スピン量子ビットを用いて、量子熱機関の挙動を模擬的に再現する実験を行った。その結果、エンジンと冷凍機に相当する二つの熱機関動作の間に量子重ね合わせが現れることを見いだした。 同成果は科学誌「Physical Review Letters」オンライン版(10月15日付)に掲載され、Editors' Suggestionに選ばれた。 <用語の解説> ◆量子ビット、量子重ね合わせ : 電子スピンの向きなどに符号化された情報の最小単位のこと。通常のデジタル回路では「0か1か」の2状態に情報が保持されるのに対し、量子ビットでは「0でありかつ1でもある」状態(量子重ね合わせ)を任意の割合で組み合わせて表現することができる。 ◆量子熱機関 : 量子ビットを用いることで従来の熱機関に量子技術を導入し、従来の熱機関にはない高い効率や新たな機能を発現させる熱機関。多くの研究機関で理論的、実験的な研究が進んでいる。これまでに超電導量子ビットやイオントラップを用いた実装がなされている。 ニュースリリース参照 https://www.riken.jp/press/2020/20201020_1/index.htm |