2020年10月27日 |
微化研、オートファジー最後の未知たんぱく質 解明 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:科学技術振興機構 |
科学技術振興機構(JST)は27日、微生物化学研究所の野田展生部長をはじめとする東京大学、東京工業大学、順天堂大学などの共同研究グループが、オートファジーを担うたんぱく質群の1つであるAtg9が脂質二重層の2つの層の間でリン脂質を往来させる活性(脂質スクランブル活性)を持つことを発見し、その活性がオートファゴソーム膜の伸展を引き起こすことを明らかにしたと発表した。 オートファジー最後の未知たんぱく質の正体が明らかになった。 細胞内のたんぱく質を分解する仕組みの1つであるオートファジーで、オートファゴソームの形成は分解対象を決定する極めて重要なステップ。これまでに同グループは、脂質輸送たんぱく質Atg2がオートファゴソームを作るためのリン脂質を小胞体から運ぶことを明らかにしたが、運ばれたリン脂質を使ってどのように膜が伸びるのかの仕組みは分かっていなかった。 研究グループは、機能が分かっていなかった酵母およびヒト由来の膜たんぱく質Atg9が、脂質スクランブル活性を持つことを試験管内の実験で初めて明らかにした。 さらに酵母Atg9の立体構造をクライオ電子顕微鏡で調べた結果、脂質二重層の2つの層をつなぐ細孔を持つことが分かった。また、細孔を形成するアミノ酸に変異を入れたところ試験管内でのAtg9の脂質スクランブル活性が失われ、この同じ変異により酵母におけるオートファゴソームの形成も阻害されることを見いだした。 これらのことから、Atg9は新規脂質スクランブラーゼであり、脂質輸送たんぱく質Atg2と協力してオートファゴソームの形成に働くという全く新しい仕組みを明らかにした。 同研究によりオートファジーの基本原理が解明され、今後のオートファジーの特異的制御剤の開発に向けた基盤となることが期待される。 同研究成果は、10月26日に英国科学誌「Nature Structural & Molecular Biology」オンライン版で公開される。 |