2020年11月02日
奈良先端大、寄生植物の宿主への侵入遺伝子同定
【カテゴリー】:ファインケミカル
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奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科バイオサイエンス領域の吉田聡子教授らのチームは10月30日、理化学研究所、基礎生物学研究所との共同研究で、寄生植物が宿主になる他の植物を認識し、植物体内への侵入を果たす仕組みを明らかにしたと発表した。

宿主がつくるエチレンのシグナル(情報伝達物質)を感知することにより、侵入を開始するもので、その機構に関わる主要な遺伝子を初めて突き止めた。この成果は、大きな被害をもたらしている作物の病害を起こす寄生雑草の防除につながる応用が期待される。

 寄生植物は、他の植物(宿主植物)に寄生して栄養を奪って生育する。寄生植物に寄生された宿主はダメージを受けるが、なかでもストライガやオロバンキなどハマウツボ科の一部の寄生植物は、農業病害雑草として、世界的に大きな農業被害をもたらす。この科の寄生植物は、「吸器」と呼ばれる寄生器官を自身の根に作り、吸器を宿主の根に付着させ、その組織の中に侵入したうえで維管束をつなげて栄養を吸収する。しかし、吸器がどうやって宿主の根の位置を認識し、組織内に侵入するのかは全くわかっていなかった。

 今回研究チームは、日本に自生するコシオガマという寄生植物を使って、吸器の伸長が止まらず、宿主に侵入できない変異体を単離した。また、ゲノム(遺伝情報)解析により、この現象(表現型)がエチレンのシグナル伝達に関わる遺伝子の異常に基づいて生じていることを突き止めた。つまり、寄生植物のエチレンのシグナル伝達に異常が生じると宿主の存在を認識できず、侵入することができないことが分かった。
 
 さらに、エチレンを作れない宿主植物に寄生植物を感染させると、寄生率が低下したことから、寄生植物は、宿主植物が生産するエチレンを認識して侵入していることが明らかとなった。宿主の侵入に必要な遺伝子を初めて明らかにしたものであり、今後病害寄生雑草の防除法の開発への応用が期待される。
 この研究成果は、10月29日(日本時間)「Science Advances」に掲載された。 


奈良先端科学技術大学院大学:ホームページ
https://www.naist.jp/pressrelease/2020/10/007374.html