2020年11月10日 |
理研、コロナウイルス/タンパク質解明 進展 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:理化学研究所 |
理化学研究所 生命機能科学研究センターの計算分子設計研究チームは10日、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスである「SARS-CoV-2」のメインプロテアーゼ(Mpro)タンパク質と7種類のヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼ阻害薬が結合する過程の分子動力学(MD)についてシミュレーションを行ったと発表した 同研究成果は、新型コロナウイルスの増殖に必須であるMproを標的とする治療薬の開発に役立つと期待できる。 ウイルスは、感染した細胞にウイルスタンパク質を作らせることで増殖する。SARS-CoV-2のMproは、細胞に作らせたタンパク質を適切な個所で切断して完成させる、ハサミ(プロテアーゼ)として機能する。 MproはHIVのプロテアーゼと類似しているため、既存のHIVプロテアーゼ阻害薬をSARS-CoV-2の治療に応用することが期待されている。 今回、研究チームは、7種類のHIVプロテアーゼ阻害薬について、それぞれMpro表面に接触する過程のMDシミュレーションを行い、結合しやすい場所(結合ポケット)の分類と、プロテアーゼ活性部位への結合しやすさを調べた。 さらに、結合ポケットの構造変化の解析によって、この構造が非常に揺らいでいることや、阻害薬と結合した状態でもさまざまな形や配置を取り得ることが分かった。阻害薬と標的タンパク質の動的な結合を例示した本研究成果は、薬候補分子の発見の新たな可能性を拓くといえる。 同研究成果は、科学雑誌「Scientific reports」(10月12日号)に掲載された。 <用語の解説> ◆メインプロテアーゼ (Mpro) プロテアーゼは、タンパク質を加水分解する酵素の総称。コロナウイルスは二つのプロテアーゼを持ち、ポリタンパク質の切断のほとんどを担うものをメインプロテアーゼと呼ぶ。メインプロテアーゼは、二つの同じサブユニットで構成される2量体である。 ニュースリリース https://www.riken.jp/press/2020/20201110_3/index.html |