2020年11月12日
桐蔭横浜大、フィルターなしで円偏光を高感度検出
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:科学技術振興機構

 JST(科学技術振興機構)は12日、さきがけ専任研究者の石井あゆみ桐蔭横浜大学 特任講師が、戦略的創造研究推進事業で、鉛ペロブスカイト系化合物に有機キラル分子を導入した結晶薄膜により、フィルターなしで円偏光を検出するフォトダイオードを開発したと発表した。

 物体表面の傷や異物、ゆがみなどを可視化する方法に光の振動方向「偏光」を検出する技術がある。偏光した光が左右に回転する「円偏光」を検出すれば、応力の強度や分布も識別できる。

 カメラや光センサーなどに使われるフォトダイオードは、偏光を直接識別できないため、各種のフィルターと組み合わせ、光を空間的に分離する必要がある。光の検出感度も低く円偏光の検出は困難。偏光をフィルターレスで検出できるセンサーの開発が望まれていた。

 研究グループは今回、鉛ペロブスカイト系化合物と、掌性(キラリティ)を持つ有機分子からなる有機-無機ハイブリッドのキラル結晶薄膜を作製し、その1次元鎖状構造のらせん方向によって左右の円偏光を選択的に吸収できることを明らかにした。

 また、これを用いて作製したフォトダイオードで、円偏光の回転方向をフィルターレスとして、世界最高の感度で検出することに成功した。

 今後、偏光検出装置の高感度化、小型化や新たなセンシング技術への展開が期待される。


本研究成果は、11月11日(米国東部時間)に国際科学誌「Science Advances」のオンライン版で公開された。