2020年11月13日
北大、自己免疫性肝炎発症に関わるタンパク質発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学大学院 薬学研究院の松田正教授らの研究グループは12日、アダプター分子であるSTAP-1が、インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞の維持および肝炎の発症を抑制する新たな分子であることを発見したと発表した。

自己免疫性肝炎は、体の中にある細胞が自らの肝細胞を攻撃し破壊してしまう自己免疫疾患。現在、日本国内では約1万人がこの病気に罹患しているが、原因が不明のため患者は生涯にわたり副腎皮質ステロイド薬を服用しなければならない。患者の生活の質の向上を目指すためには、自己免疫性肝炎の発症メカニズム解明や新しい治療方法の開発が不可欠となる。

血液を流れる細胞のうちリンパ球と呼ばれる細胞が、自己免疫性肝炎の病態に関わることが知られている。マウスを用いた実験でリンパ球の一つであるiNKT細胞が自己免疫性肝炎を起こすのに必要不可欠な細胞であることがわかっていたが、細胞内のどの分子がどのようにしてiNKT細胞を活性化し、肝炎を発症させるのかは詳しく解明されていなかった。

今回、iNKT細胞内に存在するアダプタータンパク質「STAP-1」(Signal-Transducing Adaptor Protein-1)が肝炎の発症に関わることを発見した。

STAP-1欠損マウスでは,血液中に存在するiNKT細胞の数が増加しており、刺激物質であるコンカナバリンAやαガラクトセラミドの注射によって発症する肝炎が重症化した。

一方、リンパ球特異的にSTAP-1が過剰に発現するSTAP-1トランスジェニックマウスでは、血液中のiNKT細胞の減少と肝炎発症の抑制が観察された。本研究はSTAP-1の自己免疫性肝炎に対する新たな役割を発見したもので、この疾患の新しい治療薬開発への貢献が期待される。

本研究成果は,2020年11月12日付の「PLOS ONE」誌に掲載された。


北海道大学ホームページ
https://www.hokudai.ac.jp/news/2020/11/post-752.html