2020年11月30日
理研、生き物のような「ハイドロゲル」開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センターの石田康博チームリーダーらの共同研究グループは、無機ナノシートと水のみを利用して、生き物のように力学物性を動的に変える「ハイドロゲル」を開発したと発表した。

同研究成果は、これまで高分子材料などの有機物質に頼ってきた刺激応答性ユニットとして、無機物質を利用するという新戦略を提示してきた。次世代スマートマテリアルの新たな設計指針になると期待できます。

サイエンスフィクション(SF)や神話には、無機生命体がしばしば登場する。しかし現実的には、硬くて刺激応答性に乏しい無機物質から、生き物のような動的機能を示す材料を作製するのは困難だった。

今回、共同研究グループは、酸化チタンナノシートと水のみからなるハイドロゲルが、温度や光などの刺激に応答して内部のネットワーク構造を動的に組み換えることで、力学物性を可逆的かつ高速に変化させることを見いだした。

さらに、微量の光熱変換ナノ粒子を添加することで、このハイドロゲルの物性を光刺激によって時空間的に制御することにも成功した。

本研究は、オンライン科学雑誌「Nature Communications」(11月27日付)に掲載された。


<用語の解説>

◆無機ナノシート、酸化チタンナノシート :
無機ナノシートは、層状酸化物の単結晶を温和な条件にて化学処理し、結晶構造の基本最小単位である層1枚にまで剥離することで得られる二次元ナノ物質のこと。酸化チタンナノシートは、層状チタン酸化合物の単結晶から剥離されるナノシートで、厚さは0.75nm、横幅は数μmと非常に大きい軸比の形状を持つ。その表面に大きな負電荷を帯びており、水中にてナノシート間には巨大かつ制御可能な静電斥力が働く。


ニュースリリース参照
https://www.riken.jp/press/2020/20201127_1/index.html