2020年12月10日 |
東大、肺や浮袋が膨らむ仕組みを解明 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:東京大学 |
東京大学 大学院医学系研究科の水島 昇 教授(分子生物学)らの研究グループは9日、乳類の肺胞や魚の浮袋が膨らむために必要なサーファクタント(表面活性物質)の生成に、細胞内分解系であるオートファジーが重要であることを明らかにしたと発表した。 サーファクタントを生成・貯蓄するラメラ体の成熟にオートファジーが必要であることが分かった。 哺乳類の肺や魚類の浮袋は、それぞれ呼吸や水中での浮力発生に必須な空気を含む臓器でこれらを空気で膨らませるためには、肺胞や浮袋の内側を覆っている水の表面張力を弱めることが重要だが、この役割を担うのが、サーファクタント(表面活性物質)という脂質に富む物質で、空気との境界の水面に広がって水の表面張力を弱める。 このサーファクタントは肺胞や浮袋の上皮細胞の内部に存在するラメラ体と呼ばれるリソソーム関連の細胞小器官で生成・貯蓄された後に分泌されるが、ラメラ体が形成される仕組みについては十分に解明されていなかった。 今回、研究グループは、細胞内分解系であるオートファジーが肺や浮袋のサーファクタントの生成に必要であることを、マウスやゼブラフィッシュを用いた解析により明らかにした。 肺や浮袋の上皮細胞ではオートファゴソームと未成熟なラメラ体の融合が起きており、オートファジーを抑制すると、ラメラ体への成熟が不十分となることが分かった。このようなマウスは出生直後に呼吸困難となり、ゼブラフィッシュは水中で浮いた姿勢を保てず、いずれの場合も致死となることが明らかになった。 今後、サーファクタントの不足や異常によって引き起こされる新生児呼吸窮迫症候群などの呼吸器疾患の理解につながることが期待される。 同研究成果は、12月8日(米国東部時間)に国際科学誌「Cell Reports」のオンライン版で公開された。 東京大学:ホームページ https://www.jst.go.jp/pr/announce/20201209/pdf/20201209.pdf |