2020年12月11日 |
理研、翻訳阻害抗がん剤 二つ目の標的を同定 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:理化学研究所 |
理化学研究所 生化学研究室の岩崎信太郎主任研究員らの国際共同研究グループは10日、抗がん作用を持つ植物由来の翻訳阻害剤「ロカグラミドA」の標的タンパク質として、翻訳開始因子「DDX3」を新たに同定したと発表した。 同研究成果は、今後、ロカグラミドAの作用効果のより高いがん細胞を予測することにつながると期待できる。 現在、ロカグラミドAは有効な抗がん剤として研究が進められており、標的である翻訳開始因子「eIF4A」に結合することで翻訳を阻害し、がん細胞の増殖を抑制することが分かっている。 今回、国際共同研究グループは、ロカグラミドAの標的タンパク質に蛍光標識を導入することで、eIF4Aに加えてDDX3を同定した。さらに、その作用メカニズムの理解から、通常の翻訳阻害剤とは異なり、ロカグラミドAの細胞増殖抑制効果はDDX3およびeIF4Aの発現量が多いがん細胞ほど高いことが分かった。 同研究は、科学雑誌「Cell Chemical Biology」掲載に先立ち、オンライン版(12月9日)に掲載された。 <用語の解説> ■翻訳開始因子とは :翻訳の開始に必須なタンパク質群を指す。 特に、真核生物の翻訳開始因子はeukaryotic translation initiation factor(eIF)と略される。タンパク質合成装置であるリボソームをmRNA上に集める役割を持つ。 ■ eIF4A、DDX3とは:どちらも翻訳開始因子の一つであるDEAD-box型RNA結合タンパク質。 mRNAの5非翻訳領域に結合し、RNAの二次構造を解きほぐすなどの機能により、翻訳開始を促進すると考えられている。 |