2021年01月18日
筑波大、微生物が多様な膜小胞を作る仕組み解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:なし

微生物は、細胞膜と同じ成分からなる多様な小胞(膜小胞)を細胞外に放出することが知られており、近年、それらの膜小胞が、医療やバイオテクノロジーをはじめとするさまざまな分野に応用できる可能性を秘めていることが明らかになっている。

しかし、膜小胞の多様性が生じる仕組みについては、いまだに多くの謎が残されている。特に、病原性の高い結核菌などが含まれる「ミコール酸含有細菌」と呼ばれる菌群が作る膜小胞は、病原性に関わる重要な機能を持つことが報告されていますが、それらの膜小胞ができる仕組みは未解明のままだった。

筑波大学生命環境系の豊福雅典准教授をはじめとする大阪市立大学、科学技術振興機構などとの共同研究チームは15日、微生物が多様な膜小胞を作る仕組みを解明したと発表した。

本研究では、ミコール酸含有細菌が、自らの置かれた状況に応じて、さまざまな組成の膜小胞を作り分ける仕組みを明らかにした。ミコール酸含有細菌の中でも無毒株として知られるコリネ菌に、いくつかの異なるストレスを与えたところ、(1)DNAの複製が阻害されたとき、(2)細胞壁の合成が阻害されたとき、(3)細胞膜の合成に必須なビオチン(ビタミンの一種)が少なくなったとき、の3つの場合に膜小胞が放出された。

それぞれ、作られる膜小胞の構造や化学的な組成は異なっており、かつ微生物由来の膜小胞としては非常にユニークな特徴(入れ子構造や鎖状構造)を有していた。また、同様の仕組みは、コリネ菌以外のミコール酸含有細菌にも保存されていた。

このような、微生物が膜小胞を作り分ける仕組みに関する知見は、膜小胞由来の安全なワクチン開発などにも役立つと期待される。

これらの研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ERATO「野村集団微生物制御プロジェクト」および科学研究費助成事業の一環として行われた。


同研究成果は2021年1月14日(現地時間)に「iScience」誌に掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210115/pdf/20210115.pdf