2021年02月01日 |
九大など「皮膚の触覚と神経性疼痛」解明へ |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:九州大学 |
がんや糖尿病、帯状疱疹などにかかると、神経障害性疼痛と呼ばれる痛みが発症しやすい。その発症機序は分かっておらず、また一般的な抗炎症性解熱鎮痛薬などでは抑えることができない。特に、皮膚に軽く触れただけで痛みが生じる「アロディニア」という症状はモルヒネも効き難く、治療に難渋する厄介な痛みとなる。 九州大学大学院の津田誠主幹教授(薬学)、新潟医療福祉大学の八坂敏一教授(健康栄養学)らの研究グループはこのほど、脊髄の表層に局在するある特別な神経細胞の活動が神経障害後に低下することを発見し、それがモルヒネも効きにくい神経障害性アロディニアの原因であることを世界で初めて明らかにしたと発表した。 皮膚からの触覚と痛覚信号はそれぞれ区別された神経を伝わるため、通常なら触れただけで痛みがでることはないが、神経系が障害を受けた場合、なぜ触覚が痛覚に誤変換されるのか。今回研究で、その変換メカニズムの解明につながる重要な結果を得ることができた。 神経に障害を受けていない正常のネズミで、この神経細胞の活動を人工的に低下させると、それだけでアロディニアの発症を再現することができた。さらに、神経障害後に低下した神経活動を高めることで神経障害性アロディニアを緩和することにも成功した。 今回特定した神経細胞の活動を高める化合物が見つかれば、神経障害性疼痛などの慢性疼痛に有効な治療薬の開発に新しい道筋をつくることができると期待される。 本研究成果は、1月12日に米科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」のオンライン版で公開された。 九州大学:HP https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/549 |