2002年03月18日 |
<工場ルポ>亀田製菓・廃プラスチック油化センター、高度技術で経済合理性追求 |
不要プラ包装材を完全リサイクル |
【カテゴリー】:新製品/新技術 【関連企業・団体】:NEDO |
亀田製菓(本社・新潟県中蒲原郡亀田町、金津猛社長)が今年1月から同社白根工場で実施している廃プラスチック・リサイクル活動が話題を呼んでいる。工場内で不要となったプラスチック製包装材を全量油化し、自家発電用に利用するだけでなく、その排熱もボイラーの熱源に生かすという”一石二鳥”の合理的なシステム。全国のモデル工場となりそうだ。 亀田製菓は1946年の創業。資本金19億4,612万円、年商630億円というわが国米菓業界の大手。油化による廃プラスチック・リサイクルに取り組んでいるのは、県下に4つある生産拠点のうちの1つ、白根工場だ。敷地面積は6万6,700平方メートル。従業員660人。年間出荷額は約210億円。1日当たりの平均生産量はもち米製品47トン、うるち米製品53トンの計100トンという規模。 遠山工場長や松田シニアマネージャーによると、今回廃プラスチックをリサイクルすることにしたのは、生産量の増大に伴い、パッケージングの際に発生するプラスチック製包装材の不要品の量が増えてきたためで、「何とか自社内で有効利用できないかと考えたのがきっかけ」という。 不要プラスチック包装材というのは、シール強度が十分でなかったり、印刷ずれが生じたり、サンプルとして使った包装袋などのことだが、これらの不要製品(要廃棄製品)は4工場合計で1日におよそ1トン。発生率は全体の約2%に達している。これまでは、全量を出雲崎にある県の焼却施設に運び処理していた。これを自社内で処理しようと考え、様々なプロセスを比較検討した結果、今回の完全循環型プロセスにたどりついた。 導入した油化装置は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン製の菓子包装材を400~600度Cで加熱・溶解・ガス化し、A重油相当の生成油に変えるというもので、処理能力は1日1トン。生成油の収率は80%以上。装置のサイズは幅4メートル、奥行き3.5メートル、高さ3.4メートルとコンパクトな設計になっている。プロセスの開発と装置の設計は(株)日本省エネ・環境製品が行い、製造は(株)前田製作所が担当した。設備費は4,000万円だった。 この施設は発泡スチロール製品やレジ袋、農ポリ、ボトル類なども容易に処理できるもので、(1)前処理が不要なだけでなく、金属、土砂、硝子などの異物もあらかじめ分別しなくてよい(2)他の油化装置に比べて設備費が安い(3)ディーゼル発電機に連動させてコジェネレーション化すれば、エネルギーの使用効率はさらに向上する、などの特徴があるとのこと。 コジェネレーションも含めた設備全体の投資額は約2億円だが、亀田製菓では、その3分の1をNEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)の「エネルギー使用合理化事業者支援事業補助金」で賄うことにしており、すでに認可を得ている。 リサイクル現場では、中型のPE袋に詰められたフィルムや袋類の不要品が新鋭の油化装置で連続処理されていた。袋詰めされたプラスチック包装材は、まずスチール製の大型円筒状のカートリッジに詰められ装置に装填される。所要時間はおよそ20分。装填されるカートリッジは2本で、1本に70~80キログラムの包装材が入るという。 そのあと装置内で自動的に加熱・溶解工程を経て油となる。加熱から最後の冷却までの所要時間は8時間~12時間とのことだが、装置はいかにもシンプルな構造。センター内は騒音がなく静か、そして清潔だ。運転要員は普段は1人という説明だった。 熱分解して得られた油は、そのまま燃料として使用しているが、6月からは自家発電用ディーゼルエンジンの燃料として利用することになっている。工場ではそのための施設整備が急ピッチで進められていた。これがスタートすると、同プロセス最大の特徴である経済効果と、環境保全という2つの効果がフルに発揮されることになる。 遠山工場長や松田シニアマネージャーは、そうなれば(1)リサイクル費用とエネルギーコストが合計年間3,800万円節減できる(2)炭酸ガス発生量は4.2%減少する(3)工場使用エネルギーを7.7%合理化できるなど「効果は非常に大きい」と説明してくれた。 プラスチック製品のユーザーがこうした本格的なサーマル・リサイクルに乗り出した例は、世界的にもまだめずらしいとされているが、循環型社会構築への夢が全国に広がっていく中で、この工場がリサイクル推進のモデル工場として果たしていく役割は大きいといえそうだ。(T.O) |