2021年02月12日
産総研、IgM抗体を精製するための実用技術開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:産業技術総合研究所

 産総研 生物プロセス研究部門の奥田 徹哉主任研究員らはこのほど、日本特殊陶業のチームと共同で、IgMという種類の抗体を、その機能を維持したまま効率よく精製できる技術を開発したと発表した。
不安定なIgM抗体の機能を維持したままの精製を、多孔質セラミックス粒子を用いて実現した。

 抗体にはさまざまな種類があり、産業用途には主にIgGという種類の安定な抗体が用いられる。一方、糖鎖に結合する抗体などでは高機能なIgMが得られるため、医薬品用途でのIgMの利活用が期待されている。

 しかし、IgMは構造的に不安定なため、精製過程で抗原への特異的な結合力が失われやすく、夾雑タンパク質などの不純物を含む血清や細胞培養液などの原料からIgMを実用的に精製する技術は確立されていなかった。

 今回産総研は日本特殊陶業と共同開発した抗体精製用の多孔質セラミックス粒子(PZPs)を用いて、IgMの機能を維持したまま、高い収率で原料から精製する手法を確立した。
 
 操作も容易で、精製後の加工に適した高純度のIgMが得られ、医薬品などの産業用途に応用できる。

 IgMはウイルスの検出やがん治療での有効性が注目されており、今回開発した技術の応用によってIgMを活用した新たな抗体医薬品や感染症の診断薬などの開発への貢献が期待される。
同技術の詳細は、2月9日に「Scientific Reports」誌(電子版)に掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2021/pr20210209/pr20210209.html