2021年02月18日
北海道三井化学、植物系抗がん物質 低コスト生産
【カテゴリー】:行政/団体
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三井化学100%子会社の北海道三井化学(北海道砂川市)は18日、独自の細胞培養技術によって、撹拌翼を用いずにタキサン系医薬中間体(10-DAB)を効率的に生産する手法を開発したと発表した。

800Lスケールの培養が可能なシングルユースバッグを新規開発した。撹拌コントロールが不要となるため、生産コストが大幅低減できる。同社は2022年度中にも同バッグを実用化する方針だ。

植物細胞の培養技術と、遺伝子発現制御技術とを組み合わせ、植物細胞のイチイから抗がん物質であるタキサン 系医薬中間体(10-DAB)を効率的に生産する手法の開発に成功した。

タキサン系抗がん剤は、細胞分裂に重要な役割をもつ微小管に結合・安定化することで 脱重合を阻害し、細胞分裂を妨げることで抗がん作用を示すことが知られている。このため子宮頸がんや卵巣がん、胃がんなど、多くのがん種に対して高い有効性が確認され、がん治療に広く使用されている

撹拌翼の制御ユニットなどが不要となる結果、従来のステンレス製培養槽と比べ、設備費を10分の1程度に抑えることが可能となる。

今後は、新開発したシングルユースバッグを活用し、多様な植物由来機能性物質を高効率に生産することで「スマートセルインダストリー」実現をめざす。

同社は、2016年度から NEDOの「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」プロジェクトに参画し「イチイ細胞培養技術を用いた、タキサン系医薬中間体の効率生産法」の開発に取り組んできた。


<用語の解説>
◆シングルユースバッグ :使い捨てできる培養バッグのこと。「洗浄・滅菌して再利用しない培養バッグ」が本来の定義。外界からの微生物混入などのリスクが低減できるといったメリットがある。


ニュースリリース
https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1613623966.pdf