2021年02月24日
理研、脂肪酸の抗がん作用 重水素で解明
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所の袖岡幹子主任研究員らの研究チームは22日、不飽和脂肪酸が持つ抗がん作用に着目し、重水素を導入した誘導体を用いた解析により、がん細胞の脂肪滴に集積することが抗がん作用に重要であることを明らかにしたと発表した。

同研究成果は、生理活性を持つさまざまな脂肪酸の作用解析や新たな抗がん剤の開発に貢献すると期待できる。

γ(ガンマ)-リノレン酸は、月見草などの種子に含まれる不飽和脂肪酸の一つで、抗がん活性を持つことが知られているが、その作用メカニズムは不明だった。

重水素は不飽和脂肪酸の代謝を抑制する一方で、ラマンイメージングで可視化する目印としても働く。今回、研究チームは、ヒト正常細胞とがんウイルスに感染させたがん細胞を用いて、γ-リノレン酸とその重水素化体の細胞毒性を調べた。

その結果、重水素化されたγ-リノレン酸は正常細胞への毒性が低減し、がん細胞選択的に細胞毒性を示すことが分かった。さらに、ラマンイメージングによる解析の結果、γ-リノレン酸は正常細胞では細胞質全体に分布するものの、がん細胞では脂肪滴に集積する様子が観察された。

γ-リノレン酸は代謝を受けずにがん細胞の脂肪滴に集まることで、抗がん作用を示すと考えられる。

同研究は、科学雑誌「Chemical Communications」オンライン版(2月2日付)に掲載された。


<用語の解説>
◆脂肪滴 :細胞内で脂質を貯蔵する細胞内小器官。
◆ラマンイメージング :物質に光を当てた際に得られるラマン散乱を利用して、特定の分子の局在を可視化する手法。


ニュースリリース参照
https://www.riken.jp/press/2021/20210222_2/index.html