2021年03月15日
理研、細胞外マトリックスの構築の仕組み解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 形態形成シグナル研究チームの林茂生チームリーダーらの研究チームは、ショウジョウバエの飛翔器官が構築される過程で筋肉と骨格を機能的に連結させる仕組みを研究し、両者を連結させる腱組織の構築において、細胞外基質が強靱な繊維に変換されることを解明したと発表した。

腱組織の発達は、筋肉からの力学的刺激により促進されることが動物種で知られており、今回の研究成果は、ヒトの発達期における筋損傷などで起こる運動器官の発達不全の発症機構の理解に向けた基礎研究に貢献すると期待できる。

昆虫の飛翔を駆動する強力な飛翔筋は、腱組織を介して外骨格(クチクラ)に接続し、骨格を動かすことで翅のはばたき運動を駆動する。飛翔筋は発生途中でも強い収縮力を発揮するため、腱組織が相応の強度を獲得する必要がある。しかし、腱を構築する細胞外基質がどのようにして強度を獲得するのかは不明だった。

今回、研究チームは、腱組織の細胞外基質のタンパク質Dumpyが筋肉からの張力に誘導されて、強靱な繊維に転換することを発見した。さらに、もう一つの細胞外基質のタンパク質Quasimodo(Qsm)がこの強度を増強することを見いだした。

同研究は、科学雑誌「 Current Biology 」オンライン版(2月4日付)に掲載された。


<用語の解説>
◆細胞外基質、クチクラ、コラーゲン :
細胞外基質は細胞と細胞の間を満たし、生体組織を包み込む高分子の構造体。組織の支持体となるだけでなく、細胞外環境の情報を伝えることで細胞の増殖や分化を制御する。コラーゲンは代表的な細胞外基質の一つで、脊椎動物では真皮や腱などに見られる。昆虫の体表面を覆うクチクラは、表皮細胞が分泌した細胞外基質で、丈夫な外骨格を形成する。


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