2021年03月24日 |
奈良先端大、細胞間の情報伝達に新たな機構解明 |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:科学技術振興機構 |
奈良先端科学技術大学院大学の末次志郎教授(先端科学技術研究科)らの研究グループは23日、老化やがんなどの生体情報の伝達を担う「細胞外小胞」について、細胞表面で突起した生体膜がちぎれて生み出されるという新たな機構を解明したと発表した。 細胞外小胞は、老化やがんなどのさまざまな疾患に伴い、その量が増減することから、バイオマーカーなどの用途が期待されている。しかし、この細胞外小胞が形成される仕組みについては、まだわずかなパターンしか知られていなかった。また、その原因の1つには、頂端側の細胞表面(細胞の上部)は高精度の観察が難しく、細胞全体を俯瞰して観察することが困難ということがあった。 末次教授らは、細胞の脂質膜(生体膜)の微細な形作りを担うBARドメインと呼ばれるたんぱく質モジュール(集合体)の研究を続けてきた。 BARドメインたんぱく質は、生体膜上に集まり、ブロックのように固有の形態を作る。教授らはこれまでに細胞突起は、BARドメインの一種(I-BARドメイン)の細胞膜の変形によって生じることを明らかにしてきたが、細胞突起が細胞間の情報伝達を担うとは考えていなかった。 今回の研究で、細胞膜の変形によって生じた細胞突起は毛細血管の圧力相当、通常に観察できる程度の外力によって切断され、細胞外小胞となることを発見した。 高解像度の「格子光シート顕微鏡」などによって細胞突起がちぎれる瞬間を捉えた。さらに、細胞の頂端側を含む細胞の全表面からの小胞放出の頻度と外力の指標の相関を測定した。また、見いだした細胞外小胞は、これを受け取った細胞の移動能力を増強させることや、これまでに知られていた形成機構による細胞外小胞とは含まれるたんぱく質の種類などが異なることも解明した。 今後、老化やがんとの関わりや、ウイルス小胞の放出(産生)機構の解明に向けた基礎知識を提供することができたといえる。 同研究成果は3月23日、国際科学誌「Developmental Cell」に掲載される。 ニュースリリース参照 https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210323-2/pdf/20210323-2.pdf |