2021年03月26日 |
宇部興産など、深海でセメント硬化体計測・世界初 |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:宇部興産 |
宇部興産は26日、東京工業大学など5者共同の研究グループが、深海インフラ構築に向けたセメント硬化体の特性評価手法を確立し、世界初となる実海域でのデータ計測を開始したと発表した。研究にはほかに港湾空港技術研究所、海洋研究開発機構、東京海洋大学が参加した。 深海でセメント硬化体の内部に生じる圧力やひずみを実際の深海底で連続計測することで、将来の深海におけるインフラ材料の開発や構造物の設計に役立つと期待される。 同研究の成果は、科学誌「Journal of Advanced Concrete Technology」(3月26日付)オンライン版に掲載された。 研究は、高水圧が短期・長期間にわたって作用することで、セメント硬化体がどのように変形していくかを明らかにした。これまでは潜水艇を用いて深海から回収した硬化体の変化を測定していた。しかしこの方法では、回収の際に深海から浅海までの圧力変化の影響で生じた可能性もあり、深海で生じた現象を正確に把握することはできない。 また、深海と同等の高水圧の水槽を利用した実験では、実際の構造物のスケールで起こりうる現象や実際の潮流・生物付着などの影響が再現できない。 研究グループはそこで、硬化体内部に生じる圧力やひずみを深海底で連続計測する方法を確立した。 これにより、深海で起こっている現象だけを抽出してデータを分析、考察することが可能になる。 研究グループは、2020年7月に駿河湾沖70km に位置する南海トラフ北縁部、水深約3500mの海域に硬化体と計測装置を設置した。2021年度中に回収し、計測結果を解析する計画だ。 ■研究の背景 : 日本は排他的経済水域(EEZ)の広さが世界第6位という海洋国家で、積極的な海洋利用は重要な課題のひとつとなっている。これまでも海洋資源の開発をはじめ、海洋エネルギーの利用、海底を活かしたデータセンサーの設置、大型ニュートリノ検出器の建設、深海都市構想など、新しい科学・産業分野の開拓につながるさまざまな可能性が議論されてきた。セメントはほぼ100%%自給可能な石灰岩が原料であり安定的に供給できる。将来の深海インフラ構築にむけて、セメント構造物の基礎データ収集はさらに重要となる。 ニュースリリース https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1616727146.pdf |