2021年04月07日
筑波大、棘皮動物の光応答消化の仕組み解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:産業技術総合研究所

筑波大学生命環境系の谷口俊介准教授らと産総研の共同研究グループは6日、ウニの幼生が光の刺激を受けると、胃の出口である幽門が開くことを発見したと発表した。光応答消化の仕組み解明につながるとしている。

光は生命活動におけるエネルギー源や視覚の情報源として重要で、生物はサーカディアンリズム(体内時計)の調整などで、光を生命活動の入力情報としても利用している。こうした光の役割や光刺激を伝達する仕組みは、多くの動物種を用いて明らかにされてきたが、棘皮動物では研究報告が少なく、動物界に存在する光応答の仕組みが進化の過程でどのように現れ、多様化してきたのかを論じることは難しかった。

谷口准教授らは、棘皮動物における光の役割や光応答の仕組みを明らかにするため、モデル動物であるバフンウニを利用し、その幼生に光を照射して観察した。その結果、ウニの幼生が光の刺激を受けると、胃の出口である幽門が開くことを発見した。

ウニもヒトも、摂取した食物は消化の過程で口から胃、腸へと流れる。胃と腸の間にあるのが幽門で、幽門は胃に食物が入った段階では筋肉の働きで閉じているが、消化が進むと開いて腸に食物が流れる。だが、光刺激によるウニの幽門開口は、食物を摂取する前から生じていた。光の機能の1つに消化管の制御があることを示。

今回研究では、ウニ幼生で光の刺激がどのように伝わっているのかも実験的に調べた。その結果、ウニの脳が神経伝達物質のセロトニンを放出し、その刺激が幽門近傍の細胞に伝達されて一酸化窒素を放出する、という経路で開口が行われることが明らかになった。今後、同じ後口動物であるヒトを含めた脊椎動物でも「光」によって脳腸相関が刺激される経路が見いだされるかもしれない。
本研究成果は4月6日(英国時間)に「BMC Biology」に掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210406/pdf/20210406.pdf