2021年04月12日 |
理研、マメ科植物の栄養環境への適応の仕組み解明 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:理化学研究所 |
「マメ科植物は窒素栄養の乏しい土壌でも生育できる」。筑波大学の寿崎拓哉准教授らの研究グループは9日、その理由が特定のDNA配列と結合した遺伝子の発現を調節する2つのタンパク質(NLP転写因子)にあることを突き止めたと発表した。2つの遺伝子が硝酸の濃度に応じて遺伝子の発現を制御する主要因子であることを解明した。 マメ科の植物が窒素栄養が乏しい中でも育つのは、根に根粒と呼ばれる器官を形成して根粒菌と共生し、大気中の窒素を利用できる根粒共生と呼ばれる現象によるが、共生を成立させるために植物は、光合成産物を根粒菌に供給する必要がある。 植物は、硝酸など窒素栄養が豊富な土壌では窒素栄養を直接得る戦略をとり、不必要なエネルギーの消費を防いでいることになる。だが、この仕組みは不明だった。 研究グループはマメ科のモデル植物ミヤコグサを用いた研究で、特定のDNA配列と結合して遺伝子の発現を調節する2つのタンパク質(NLP転写因子)NRSYM1とNRSYM2が、硝酸の濃度に応じて遺伝子の発現を制御する主要な因子であることを明らかにした。 また、根粒を作る働きを持つNINと呼ばれる転写因子の発現の多くは、NRSYM1転写因子とNRSYM2転写因子の働きによって抑制される。 さらに今回、硝酸が豊富な条件下では、NRSYM1転写因子がNIN転写因子と相互作用をすることで、NIN転写因子の標的遺伝子の発現が抑制される可能性があることも明らかにした。 これらの発見により、転写因子を介した植物の遺伝子発現制御の基本的な仕組みの理解が深まるとともに、「窒素栄養が豊富な環境で植物はどのようにして根粒共生をやめるのか」という問いに答える重要な基礎的知見を提供することができた。 本研究成果は、大豆などマメ科作物の効率的な肥料管理など、持続可能な農業の実現に貢献すると期待される。 同研究成果は4月7日(米国東部時間)に「The Plant Cell」誌に掲載された。 ニュースリリース参照 https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210409/pdf/20210409.pdf |