2021年04月20日
東北大、X線による磁気検出の例外ケースを理論予測
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

東北大学金属材料研究所の木俣基准教授らのグループは、(公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)と共同で、X線磁気円二色性(X-ray Magnetic Circular Dichroism: XMCD)と呼ばれる磁気光学効果が、強磁性やフェリ磁性など磁化を有する磁性体だけでなく、磁化ゼロの状態にあっても特定の磁気秩序を有する反強磁性体に観測され得ることを理論的に明らかにしたと発表した。

XMCDは1987年にドイツのGisela Schutz博士が放射光を用いて初めて実験的に観測して以来、実験と理論の両面から多くの研究が行われてきた。

これまで、XMCDについては「磁化した磁性体と円偏光X線の相互作用により観測される磁気光学効果」と説明されてきたが、今回の理論研究によって磁化を持たない磁性体でも観測され得ることが分かり「例外を除けば..」と追記することが必要になった。

Schutz 博士がXMCDの初観測に成功してから30年以上を経て、従来の常識が覆されたといえる。この「例外」は、正三角形の頂点に磁性原子を配置した特殊な反強磁性秩序を仮定し、かつ、その磁気モーメントが扁平に拡がる電子雲のスピンから生じるというモデルを立てて見出した。

このように非常に特殊な状況を仮定する必要があるが、研究グループは既存物質のなかにも候補物質があると考えており、実験的に確認されることを期待している。

同研究成果は、米国物理学協会の学術雑誌「Physical Review Letters」オンライン版に4月16日掲載された。


<用語の解説>
■X線磁気円二色性(X-ray Magnetic Circular Dichroism: XMCD)とは:
X線磁気円二色性とは、磁性体を透過する円偏光X線の吸収係数が左回り円偏光と右回り円偏光X線で差を生じる現象のこと。従来はXMCDの発現には物質全体で有限の磁化を持つ状態が必要と考えられてきた。この原理に基づき、様々な磁性体の電子状態を明らかにする強力な手法として広く活用されている。


ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/04/press20210419-01-x.html