2021年05月10日
北大、気候変動下での海洋生物の退避海域を発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学北極域研究センターの平田貴文特任准教授らとアラスカ大学の国際共同研究グループは7日、気候変動の激しい北洋海域の東ベーリング海陸棚海域を調査したところ、その北部と南部にそれぞれ生物多様性の高い海域が局所的に存在していることを見つけたと発表した。

研究グループは1990年~2018年の長期にわたって得られた159種の魚類や無脊椎動物の観測データを用いて、東ベーリング海陸棚海域を調査した。

それらの海域は研究海域に占める面積が10%程度にもかかわらず,調査種のうちの91%(159種中144種)の生息地となっていた。さらにそれらの海域では商業魚種(スケトウダラやマダラ)やカニ類(ズワイガニなど)も多く漁業資源の保護の点からもその海域の重要性が示された。

また研究グループは、これらの多様性の高い海域における観測データを用いた解析により、過去約30年間で冬季の海氷や水温変化が比較的小さい気候緩衝海域と一致していることを見出した。

これらのことから、東ベーリング海で長期にわたって生物生産を維持できる緩衝された気候が、高い生物多様性と安定な群集構造の存在を許容していると考えられる。

同研究成果は、気候変動下で回復力のある海洋生態系及び今後の水産業の維持、海洋生物多様性保全の進展につながると期待できる。

同研究成果は4月25日、オンライン公開の「Global Change Biology」誌に掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/05/post-835.html