2021年06月23日 |
金沢大、ベンゼンとハロゲン基を触媒で切断、新開発 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:科学技術振興機構 |
金沢大学 医薬保健研究域の大宮寛久教授らは23日、環境負荷の少ない有機触媒を用いて、芳香族ハロゲン化合物のベンゼン環とハロゲン基の結合を切断し、芳香族ラジカルを発生させることのできる画期的な化学反応を開発したと発表した。 ベンゼン環とハロゲン基が結合した芳香族ハロゲン化合物は、入手が容易で化学的にも安定しているため、有機合成におけるベンゼン環の供給源として用いられている。近年は、芳香族ハロゲン化合物を金属触媒あるいは光触媒によって電子還元し、ベンゼン環とハロゲン基の結合を切断することで、芳香族ラジカルを発生させる化学反応が開発されている。 しかし、報告されている手法は、金属塩や過剰の酸化剤や還元剤を必要としているため、より環境負荷の少ない化学反応が求められている。 研究グループは今回、チアゾリウム型含窒素複素環カルベン触媒を用いることで、芳香族ハロゲン化合物の一種である芳香族ヨウ素化合物から、光や金属塩を必要しない穏和な条件下で、ベンゼン環とハロゲン基の結合を切断し、芳香族ラジカルを発生させることに成功した。 同グループの独自技術「電子反応を制御する含窒素複素環カルベン触媒」を発展させて実現した。 この化学反応により発生させた芳香族ラジカルを活用することで、アルケン化合物あるいはアミド化合物を高い付加価値を持つ有機分子に変換することができる。 有機合成に汎用される芳香族ハロゲン化合物から、芳香族ラジカルを簡単に発生させることできるため、医農薬、化学材料を精緻に組み上げる強力な技術になると期待される。 同研究成果は、6月22日付「Nature Communications」のオンライン版に掲載される予定。 |