2021年07月13日
東レ、5G通信・自動車運転 対応 高性能PBT開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東レ

 東レは13日、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂が有する寸法安定性や成形加工性を維持しながら、高周波ミリ波帯における誘電損失を従来比約40%低減した高性能PBT樹脂を開発したと発表した。
 
 同樹脂は、5G通信用基地局や自動運転に向けた車載高速伝送コネクタや通信モジュール、ミリ波レーダー等の性能向上に大きく貢献する。今後、本格的にサンプルワークし、5G通信用材料として市場開拓する。次世代の運転支援システム(ADAS)や高度道路交通システム(ITS)分野にも用途開発していく方針だ。

 PBT樹脂は、寸法安定性や強度などに優れた汎用エンプラ。近年、自動運転などに用いられる高周波部品用途などでは、伝送ロスの低減のため誘電損失の改善が求められており、ポリマーアロイや充填剤を添加する方法が用いられている。しかし、PBT樹脂自体の誘電損失が大きいため、誘電損失の低減に限界があり、さらに耐熱性や機械物性が低下する課題があった。

 東レは、ポリマー重合技術で実現した新規ポリマー構造により、高周波領域でのポリマーの分子運動を抑制することで、PBT樹脂本来の基本特性は損わず、高周波ミリ波帯(79GHz)における誘電損失が従来比約40%低減となる誘電正接0.006を実現した低誘電損失PBT樹脂を開発した。

 本開発品は、5G通信の周波数帯であるsub6から高周波ミリ波帯の広範囲で低誘電損失化を維持し、高温や多湿環境下での誘電特性の安定性に優れている。高周波部品設計で課題となる伝送ロスが大きい広角度からの入射波に対しても、伝送ロスを低減し、広域なセンシングが可能だ。また、電気回路やコネクタの電気抵抗を従来同等に制御しつつ製品を小型化するのは困難だったが、同開発品は低誘電損失のため電気抵抗を従来同等に抑制でき、小型化が期待できるなど、5G通信用材料やADAS、自動運転、ITS分野の部品の小型化や軽量化、性能向上に貢献する。


<用語の解説>
◆誘電損失 :電磁波エネルギーが材料の中で熱に変換され、エネルギー損失が起きる現象。
◆先進運転システム(ADAS):ドライバーや歩行者などの安全・快適を実現するために、自動車が各種センサーを用いて周囲の状況を把握し、ドライバーに的確に表示・警告を行ったり、ステアリングホイールやブレーキなどの操作に関与し、ドライバーの操作を支援するシステム。
◆誘電正接 :誘電損失の度合いを示す材料指標。


関連ファイル参照
https://www.toray.co.jp/news/details/20210712152248.html