2021年07月30日 |
理研、分子を1個単位で分析/世界最高感度顕微鏡 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:理化学研究所 |
理化学研究所は29日、今田裕上級研究員と數間惠弥子研究員が、異なるテーマで同時に文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞したと発表した。 いずれも、独自開発した世界最高感度の走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope:STM)を使い、これまで分子の集団でしか分からなかったエネルギー変換や化学反応の詳細を、分子1個の単位で捉えることに成功した。これらの成果は、デバイスや材料の開発に新たな知見を与えると期待される。 光合成や太陽電池など、光をエネルギーに変換する現象では分子から分子へエネルギーが移動する。エネルギーを受け渡す分子までの距離など、分子の状況は1個1個異なるが、これまでは分子1個だけを調べる方法がなく、詳細に調べることはできなかった。 STMは、探針という先端が極めて細い金属の針で試料表面をなぞりながらスキャンし、探針と試料の間に流れる電流から試料の形状などを捉える顕微鏡。 今田氏は、STMと高感度の光の検出機構を組み合わせた世界最高感度の「光STM」を開発。顕微鏡で観察している1個の分子にエネルギーを与え、その分子が発するわずかな光の波長やエネルギーを測定可能にした。 今田氏は2016年、1個の分子から隣接する分子にエネルギーが移動する様子や分子間の距離によるエネルギー移動効率の違いを分子の発光から明らかにした。2021年には、1個の分子の性質を精密に計測できるまで光STMの分析能力を向上させることに成功した。 今田氏は「光STMの性能向上はライフワークとして継続し、独自の基礎研究を発展させて新たな現象の発見を目指していきたい。これからは量子を利用したエネルギー移動やエネルギー変換の制御などの応用研究もしたい」と話している。 関連ファイル(2021年7月2日付) https://www.riken.jp/press/2021/20210702_1/ |