2021年08月17日
早大、械学習手法により難問「量子スピン液体」解明
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:早稲田大学

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センターの野村悠祐研究員、早稲田大学理工学術の今田正俊教授らの共同研究チームは17日、機械学習を用いた世界で類を見ない高精度手法により、幾何学的フラストレーションのある量子スピン系の解析を行い、スピンの向きが絶対零度でも整列せず、量子力学的に揺らぐ「量子スピン液体」相を発見・確証し存在領域を特定したと発表した。

本研究成果は、量子スピン液体中でスピンが分裂して生じる「スピノン」の性質を解明し、これを量子計算への応用につなげるとともに、現実物質で量子スピン液体を実現するための有用な指針を与えると期待できる。

今回、共同研究チームは、機械学習分野で用いられる人工ニューラルネットワークの一種である制限ボルツマンマシンと物理分野で用いられる強力な関数を組み合わせて、スピン間の高度な量子もつれを学習させる手法を構築した

。スーパーコンピュータ「富岳」などでこの手法を用いた大規模計算を行い、2次元正方格子上のフラストレーションのある量子スピン模型を世界最高レベルの精度で解析した結果、フラストレーションが強くなる領域で、量子スピン液体相の存在の確証を得た。

さらに、実現した量子スピン液体相の励起構造も調べ、通常のスピンの励起が分裂し、分裂した粒子が独立した粒子のように振る舞う分数化という現象を捉えた。

同研究成果は、オンライン科学雑誌「PhysicalReviewX」(8月12日付)に掲載された。


早稲田大学大学ホームページ参照

https://www.waseda.jp/fsci/wise/