2021年08月20日
九大、高分子ガラス表面の疑似絡み合い観測に成功
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 次世代モビリティの軽量化を目的として、構造部材のマルチマテリアル化が進み、将来的にはオールプラスチック化が予測されているが、九州大学 大学院工学研究院の田中敬二教授(次世代接着技術研究センター長)らの研究グループは19日、接着現象を、巨視的な力学強度までマルチスケールな空間で包括的に解析したと発表した。
 
 研究グループはナノクリープ実験に基づき、高分子ガラス表面では分子鎖の長さに依存しない絡み合いセグメントが存在することを観測した。従来、高分子鎖の絡み合いはその長さのみで規定されると考えられていたが、本研究では、高分子表面に存在する分子鎖が内部領域までつながるため、表面近傍でセグメントが緩和しても疑似ループコンフォメーションが形成され、短い分子鎖でも一時的に絡み合ったような粘弾性挙動を示すことを明らかにした。
 
 この成果は、熱可塑性表面層での分子鎖の絡み合い制御につながることから、現在、接着方法論が確立されておらず適用例の少ない熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の接着技術の開発を加速すると期待できる。

 同研究は、田中教授が客員教授を勤める浙江理工大学および南フロリダ大学、プリンストン大学と共同で行われた。同研究成果は、8月18日(英国時間)に「Nature」誌のオンライン版に公開される。


ニュースリリース参照
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210819/pdf/20210819.pdf