2021年08月27日 |
九大、難治性食道がん ゲノム進化過程を解明 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:九州大学 |
放射線治療と抗がん剤投与を同時に行う化学放射線療法は食道がんの有効な治療法の一つだが、治療後に再発することがある。がんゲノム(がん細胞のDNAに含まれる遺伝情報)異常が治療抵抗性の一因と考えられているが、詳細は解明されていない。 九州大学の三森功士らの研究グループはこのほど、化学放射線療法の効果が低く再発しやすい難治性食道がんのゲノム異常の特徴や、再発に至るがんゲノム進化の過程を明らかにしした。 食道がん患者33名から化学放射線療法前に得た腫瘍と、うち5名の再発腫瘍から次世代シークエンサーを用いた包括的ゲノムデータを取得し、スーパーコンピュータを用いた数理統計解析を行った。その結果、治療前にMYC遺伝子のコピー数が増加している食道がんでは治療効果が低いことが判明した。公共のがん細胞株データベースでも、食道がんのMYCコピー数増加は放射線治療抵抗性と相関していた。 さらに再発腫瘍のゲノムを時空間解析した結果、がんの進展に重要なドライバー遺伝子異常を持つがん細胞は治療後も生き残り再発の源になること、再発時に新たに獲得するドライバー遺伝子異常は少数であること、がんゲノムの進化に治療が与える影響も明らかとなった。 今回の成果はがんゲノム情報に基づく化学放射線療法の個別化医療・精密医療の開発や、難治性食道がんの新たな治療開発につながると期待される。 本研究成果は、8月20日に米国科学雑誌「Cancer Research」で公開された。 ニュースリリース参照 https://www.kyushu-u.ac.jp/f/44887/21_08_24_01.pdf |