2021年09月24日
量研、悪性中皮腫向けアイソトープ治療薬候補 開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 (国研)量子科学技術研究開発機構(量研)は24日、東北大学と共同で、悪性中皮腫(がん)に対するα線放出核種を用いた治療薬候補の開発に成功したと発表した。その効果を動物実験によって明らかにした。

 中皮腫は、胸膜、腹膜などにある中皮から発生する悪性腫瘍で、80 ー85%は胸膜から発生する。中皮腫の原因のほとんどは、アスベストばく露とされる。日本では大きな社会問題となり、2004年には全アス ベストの使用が原則禁止となった。だがアスベトばく露から発症までの潜伏期間が25 ~50年と長いため、悪性中皮腫の発生ピークは2030年頃、罹患者数は年間 3,000人に及ぶと予測されている。診断された患者の7割以上は進行がんであり、有効な治療法がないことから新たな治療法が望まれている。

 量研はこのほど、放射線の飛ぶ距離が細胞数個分と短かく、当たった細胞を殺傷する能力が高いα線を放出する核種「 225 Ac」を加速器で効率よく製造することに成功した。この「225 Ac」を中皮腫 細胞だけに届けることができれば、飛距離の短かいα線により、周囲の正常細胞を傷つけることなく、効率よくがん細胞を殺傷することができる。既存の治療法では効果がない悪性中皮腫に対する新たな治療法 となることが期待される。
 
 同研究成果は9月23日付の「Cells」にオンライン掲載された。